「本を書く医師」が医学情報をわかりやすく伝えます
|
||
|
プロテインの過剰摂取にご用心 健康診断で蛋白尿を指摘されたと言って若い男性が受診したときは、「筋肉を増やすためのプロテインを飲んでいませんか」 と聞くことにしています。 蛋白尿には大きな病気が隠れている場合もあるので、慎重な検査が欠かせませんが、クラブ活動や趣味でスポーツに打ち込む人や、ジムで体を鍛える人のあいだでプロテインの摂取が流行していることを背景に、プロテインの摂り過ぎによる蛋白尿が最近増えているのです。 蛋白質は、炭水化物や脂肪と並ぶ重要なエネルギー源です。しかし、蛋白質の必要量は一般に考えられているより、ずっと少ないので、筋肉をつけたいからと、食事に加えてプロテインのサプリメントで蛋白質を補う必要があるかは大いに疑問です。 スポーツ栄養学の見地からは、蛋白質の摂取量は体重1 kgあたり一日2 gまでとされています。生まれ持った体質や、その時点での健康状態などによって幅があるとはいえ、せいぜい3 gが上限でしょう。 蛋白質の問題は、エネルギー効率が悪く、燃焼することで有害なアンモニアができてしまうことです。体から漏れ出すほど大量にプロテインを摂取すると、アンモニアを分解して排泄するために、肝臓や腎臓に多大な負担がかかります。こうなると、筋肉の合成が衰え、疲れやすくなり、抵抗力も落ちて、筋トレどころではなくなってしまいます。 アンモニアを分解するにもエネルギーを大量に消費するので、特に持久力が必要なスポーツの試合前には、プロテインはもちろん、蛋白質を含む食物の摂取はやめたほうがいいでしょう。焼肉やステーキよりも、おにぎりやバナナの方がバテないのはこのためです。 そもそも、蛋白質さえ摂っていれば筋肉が作られるほど人間の体は単純ではありません。食物に含まれる蛋白質以外の成分によって蛋白質の吸収と利用が促進されますし、内臓への負担も軽減されます。従って、筋肉を確実に増強したいなら、毎日の食事を通じて良質の蛋白質を摂る方がずっと効果的です。 良質の蛋白質の代表は、動物性蛋白質なら脂質の少ない肉、魚、低脂肪牛乳、ヨーグルトなど。植物性蛋白質なら豆製品(納豆、豆腐)、玄米などです。動物性蛋白質の方が蛋白質の含有量は多いのですが、脂肪も多く含まれていて肥満の原因になります。植物性蛋白質と半々くらいで組み合わせるのがよいでしょう。 |
|
Copyright (C) 2011 「本を書く医師」事務所 All Rights Reserved. |